小説 戒めの剣 1 (本編)

ちょっと真面目にあらすじ。
何不自由ない高校生活を送っていた涼は、ブラコンなだけで普通の女の子、のつもりですが、
その血に、人には言えない秘密があります。
その謎めいた憧れの兄の不審な行動から、異世界に紛れ込んでしまった涼は、
偶然出会ったブラウンの髪の美青年剣士に拾われます。
なぜか絶え間なく命の危険に晒され……。
そこには国の内部の権力争い、国家間の政治的な思惑、駆け引きがあります。
その中で次第に目覚めてくる想いと、とある剣の謎。
彼女を巡る綱引きが激しくなる中で、大きな障害を抱えた恋の行方は…………。
*プロローグ*
「閣下……」
男が入っていくと、居並ぶ者たちはみな一様に目を伏せる。夕刻だろうか。
すべてがセピア色に染まる重厚な家具、分厚い絨毯の豪奢な部屋。
ベットの上には……。まるで生気を失った女がそこにいた。大声で呼ぶと、
女神像のような白い顔がわずかに動いて目を開ける。
伸ばそうとしている震える手を男は包みこむように握る。ひび割れた唇から、
喘鳴のような声が漏れる。
「……ンを捜して…カ……ンは、私の大切なア」
ふっと吸い込まれた息は、二度と吐き出されることはなかった。
部屋の中に、悲鳴とすすり泣く声が満ちる。男が泣いているようには見えないが、
微かに肩が震えている。
返り血に染まる服、足元に転がる赤い剣。
その赤さが四方八方に、視野一杯に広がって――――――――
涼はハッと目を覚ました。ベッドの脇に誰か座っている。
「……どうした?ずいぶんうなされていたぞ」
「おはよう、透兄さん。なんかまた変な夢を……」
「そうか。じゃあきっとこれも、夢だということですむな」
「……な、なにを」
近づいてくる、その端正な顔。
「キャー!……そんな」
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